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田川基成 土地の教会 Vernacular Churches in Nagasaki
田川基成 土地の教会 Vernacular Churches in Nagasaki
会期:2025年2月1日(土)-2月15日(土)
時間:13:00-19:00
休み:月・火曜
作家在廊予定日:土・日曜
このたびEUREKAでは、2025年2月1日(土)より、田川基成さんの個展「土地の教会 Vernacular Churches in Nagasaki」を開催します。本展では作家の故郷・長崎の海を巡る旅を記録した「見果てぬ海」シリーズの中から、とくに長崎県の離島沿岸部に多い「土着のキリスト教会」のありようを捉えた作品群を、初公開の作品を含め展示します。近年は福岡県糸島市を拠点に制作を続ける田川さんの視点をぜひこの機会にご高覧ください。
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五島列島をはじめとする長崎県の離島には、現在約70のカトリック教会が存在します。その多くは、江戸時代の宗教弾圧を逃れ、九州本土から海を渡った潜伏キリシタンの子孫によって造られたものです。
16世紀の宣教師による布教によって、この地域では大村藩、平戸藩、島原藩などを中心に大名や多くの領民がカトリックに改宗しました。布教は九州一円におよび、今の大分県や福岡県でも信徒は増えました。当時全国に約30万人のカトリック信徒がいたとの推計もあります。しかし17世紀頃になると幕府によるキリシタン弾圧が強まり、多くの人々は仏教に改宗し、もし抵抗すれば拷問や虐殺を受けました。
江戸時代には、潜伏キリシタンとして隠れ、信仰を後世に伝えた人々がいました。特に長崎県の西彼杵半島にある外海(そとめ)地区からは、3000人以上が海を渡って五島列島に逃れたとされます。
禁教が解かれた明治初頭には、欧州から再来した神父たちが舟に乗り島々を周ったことで、地域にカトリック教会が復活しました。今ここにある教会の多くは、その潜伏キリシタンの子孫たちが、瓦や木材、石、煉瓦など土地固有の材料を使い、自らの手で建てたものです。古いものでは100年以上、地域の信徒によって代々守られてきました。
長崎の離島でカトリック教会が立つ場所の多くは、本来なら人が住むことのできない急峻な斜面であり、複雑に入り組んだ湾の奥で、港から遠く離れた山奥です。それは離島に逃れてきたキリシタンの先祖が、潜伏のためあえて不便な土地を選び、コミュニティをつくり自給自足の生活を送っていたことに由来しています。
いま教会は信仰の場としてだけではなく、地域共同体の集会所としての役割も果たしています。華美な装飾もなく、集落の生活に根ざした土着の教会。その姿に、この地で長くキリスト教が信じられてきたという歴史と、人々の間における信仰ありようを静かに感じています。
− 田川基成
【関連イベント】
対談「潜伏キリシタンの海を巡る」
日時 2月15日(土)18時〜19時半
伊藤敬生(九州産業大学芸術学部教授・長崎市出身)×田川基成(写真家・西海市出身)
要予約 20名
参加費 1,000円
*お申込み方法
代表の方の氏名、電話番号、参加人数・参加者氏名を添えて下記メールアドレスよりお申し込みください。
ギャラリーからの予約確認をもってお申し込み完了といたします。
eureka@cap.ocn.ne.jp
作家プロフィール
田川基成 (たがわ・もとなり)
1985年生まれ、長崎県西海市の離島出身。
これまでに暮らしてきた土地と旅の経験を通して、移民と文化、風景と記憶などをテーマに写真作品を制作する。北海道大学農学部森林科学科を卒業後、2010年から東京で編集者・記者として働き、後に写真家となる。
千葉県の団地に暮らすイスラム教徒のバングラデシュ移民家族の5年間を撮った「ジャシム一家」で第20回三木淳賞。故郷・長崎の海を巡る旅を記録した写真集・写真展「見果てぬ海」で2022年日本写真協会新人賞。在日韓国人作家・尹紫遠の生涯を追った『密航のち洗濯』(2024,柏書房,共著)で第46回講談社ノンフィクション賞を受賞。
2021年秋より福岡県糸島市に暮らす。
西日本新聞紙面で「まちを撮る スナップドキュメント」を月1回連載中。
[写真集]
『見果てぬ海』(2020,赤々舎)
[個展]
2024 「海の記憶」(LIBRIS KOBACO/福岡)
2022 「SAPPORO SNOWSCAPE」(Alt_Medium /東京)
2022 「海の記憶」(PARADISE/長崎県西海市)
2022 「海の記憶」(gallry Y/茨城県つくば市)
2022 「五島」(たゆたう。/長崎県五島市)
2022 「見果てぬ海」(伊都郷土美術館 /福岡県糸島市)
2021 「NAGASAKI SEASCAPES」(Alt_Medium /東京)
2021 「見果てぬ海」(HOGET / 長崎県西海市)
2021 「見果てぬ海」(たゆたう。/長崎県五島市)
2021 「見果てぬ海」(ESSE /札幌市)
2022 「見果てぬ海」(コクラヤギャラリー /長崎市)
2020 「見果てぬ海」(Nikon Plaza 東京・大阪)
2020 「Vernacular Churches」(Alt_Medium /東京)
2018 「ジャシム一家」(Nikon Plaza 東京・大阪)
2018 「ジャシム一家」(札幌市教育文化会館/北海道)
2017 「ジャシム一家」(Nikon Salon 銀座・大阪)